

夢のオーディオレコーダーとして登場したDATですが、CDからのデシタルコピーが出来ないということが世間で大きな誤解を招き、ごく一部の人にしか認められず、このままDATは消えてしまうかに思えました。
しかし、SCMS(シリアルコピーマネージメントシステム)という規格が誕生。第一世代までのデジタルコピーが可能になり、DAT市場拡大を狙った低価格なDATデッキ、それがこのDTC-55ESです。
このモデルは定価98000円という手頃な価格がウケて、かなりの台数が出回っていると思われます。メカは2DD+1BSLとコストダウンされていますが、非常に良く出来たメカで、しっかりとした確実な動作に加え壊れにくいのが特徴です。性能的には4DDには劣りますが、逆に我々素人がイジるにはシンプルでメンテのしやすいメカです。その後発売された57ESなどからメカにプラスチック製のソニータイマーが搭載され、よくテープを食べるマシンに生まれ変わりました。
今回はジャンク品を数台入手して、ベータま。さんにアドバイスを頂きながらいろいろイジってみました。
フロントパネルにはボタン類がいっぱい付いています。
リモコンが無くてもほとんどの操作を本体で行う事が可能ですので使い勝手はかなりいいです。
フタを開けるとこんな感じです。
安く作ったモデルだけに、メイン基板にデジタルからアナログ回路まですべて実装されています。
電源部のみ独立です。
電源部です。
DUOREXなど高音質、大容量のコンデンサが搭載されています。
トランス容量は並ですが、まぁ十分でしょう。
DAC部です。
DFはNPCのSM5813でDACは18Bit/8fs対応のBB社PCM61PのJランクをMSB調整して使っています。
I/V変換は内部で行っていますので音もそれなりです。このへんは後で改造します。
メカ部です。
ビデオデッキをすごく小さくしたようなものですね。
今回入手したものはすべてトレイ開閉は出来るのですが、テープ走行不可というものです。
と、いうことで、メカを中心にメンテしていきます。
メカを取り出しました。
取り外しは簡単で作業性も良いです。
ヘッドクリーナーのスポンジは、既に経年によりベトベトになっていました。
これではクリーニングどころか汚してしまうだけです。
無くても支障は無いので、撤去してしまいました。
そのヘッドクリーナーの隣に付いているロータリーエンコーダー。
ノーメンテの機体なら間違いなく壊れる部品ですので無条件で交換します。
外してみると、御覧の通
り、ギアが割れています。
うまくすれば、こんな感じで修理可能ですが、部品代も700円と手頃ですのでここは新品交換しておきます。
品番は1-464-724-32です。
その他、消耗品も手頃な価格ですので交換しておきます。
まずはリール台のブレーキ関係から始めます。
ユニットごと外れるので簡単です。
新品部品を取り寄せて交換します。
作業性は抜群で楽勝そのものです!
交換した部品は、レバーASSYブレーキT品番X-3337-635-1と、 レバーASSYブレーキS品番X-3337-636-1、各200円です。
カセット検出スイッチも交換します。
コイツがダメになるとカセットが検出されず不具合が発生します。
品番は1-571-878-11 400円です。
カセコン(?)を外して表から攻めます。
ホント、バラし易いメカでラクです(^^)
レバーASSY/スライダーを交換します。
品番はX-3337-638-1で200円とこれまたお手頃価格であります。
すべて組み上がったところで動作確認をしてみます。
メカはバッチリ!問題なく快調です...が、再生音がノイジーで実用ではありません。ひょっとしてヘッドかな?!
ヘッドを疑う前にヘッドアンプを点検してみる事にしました。
ハンダを吸い取り、シールドケースを開けてみると、表面
実装の電解コンが派手に噴いていました!
幸い、基板腐食にまでは至らなかったのですが、漏れた電解液を根気よく拭き取って交換します。
リード線タイプに交換しました。
小型の物で6.3V/22uFを2個使用します。
これでバッチリ!...と思ったのですが、症状変わらず...ヘッド交換するしか無さそうです(泣)
仕方がないのでヘッド交換をする事にしました。
新品のヘッドは高いので、「動作しなくなるまでは正常に録再できていました」というジャンク品を入手して、それから外して利用しました。
交換作業を終え、動作確認をしてみると、これまた酷い音です。
やはり、キチンと調整しなければダメなんですね。
調整しようとしたら、このローディングポストが両方とも簡単に抜けてしまいました。これでは調整も何も出来ません。
仕方がないので、一旦抜いてからアロンアルファを流し込んでおきました。これなら交換する必要はありません。
ベータま。さんからアドバイスして頂いた通
りにセッティングして調整開始です。
ジャンクな機材ですが、十分使えますね(^^)
本当は調整用テープが有れば良いのですが持っていないので過去に録音した正常と思われる(?!)テープで調整することにしました。
正常なデッキで録音したテープを再生し、RF波形のデータエリアがフラットに、かつ両端の角が立つようにポストを調整していきます。
出口側のポストを荒調整したあと入口側から調整するとうまく行くようです。また、調整は下から上げていくようにすると間違いないとのことです。
これだけで調整は完璧です!
以上で一通りメンテが終わりました。動作音質共に良好です!
このままでも良いのですが、更なる高音質DATにするため改造する事にしました。
まず、ダーゲットはDAC回路にあるPCM61Pです。先ほども説明した通 り、I/V変換を内部のオペアンプで行っているため、音質的にはかなり寂しいものになっています。
そこで、内部処理をやめて外部にI/V変換回路を追加することにしました。
これだけでも十分なのですが、このDATにはDACモードが搭載されていて、単体DAコンバーターとしても利用出来るようになっています。それならということで、LPFを通 さないDACダイレクト出力端子を追加装備させる事にしました!
通常、DAC出力の後には必ず不要な高域成分をカットするLPFが付いていますが、このDACは8倍オーバーサンプリング方式ですので、ノイズは350KHz以上へ持ち上げられてしまいます。もちろん、この域は人間の耳には聞こえませんので、極端な話、LPFなど無くても問題ありませんし、その方が余計な回路を通 さないので音質的にも有利です。
めんどくさいから全部空中配線...良い子はマネしないでね(^^;
各オペアンプ直近にコンデンサを追加して電源も強化。M5238によるI/V変換回路はPCM61Pの近くに組み、内部の帰還抵抗を利用。DACダイレクト出力専用バッファ回路はNJM5532DD+MUSEコンデンサ、MUTE回路もリレー式を追加しました。
回路的には簡単なものですが、効果は絶大です!
リアパネルにDACダイレクト出力端子を装備させました。
LPFを通さない分、音質的にも有利です。実際こちらの方がよりクリアな音質が楽しめます。350KHzあたりからノイズが出ているはずなのですが、私の耳では全くわかりません(^^;
純正の端子をアンプのテープ端子へ繋いで、DACダイレクト出力はAUXやLINEに繋ぐなどして、気分やソースに応じて切り替えて使う方法が良いかと思います。
ノーマル比での一番の違いは高域の質の高さでしょうか。無理なくスーっと伸びて心地良いです。低域方向にも厚みが出てきてこれはもう低価格DATの音ではないです!マルチビットDAC特有のパワフルで元気の良いサウンドが楽しめるようになりました。
DACダイレクト出力端子の音質は、更に磨きがかかったというか、よりクリアな音といった印象です。LPFが無いのでノイズが出ているはずなのですが、歪感などは全く感じません。むしろ、こちらの方が滑らかな音が楽しめます。不思議ですね。
アイワのカセットデッキXK-S9000とデンオンのDATデッキDTR-2000G、そして今回のDTC-55ESは3機種すべてDAC部にPCM61Pを使っていますが、音はそれぞれ全く違うというのが面 白いです。
アナログ的な鳴り方という点ではDTR-2000Gの方が上のように感じました。その音を更に低重心化させ本格的な音にしたのがXK-S9000改の音といった感じです。
このへんはデジタルフィルイターやアナログフィルターの違いによって大きく変わるのかもしれません。
今となってはDATなんて枯れた規格ですが、やはり音質という点ではトップクラスですし、今回のような改造をしておけばDACとしても十分楽しめますので、この先テープが無くなっても長く付き合えると思います。
壊れにくくてイジり易いメカ、手を加える事が出来るシンプルな回路、そしてなによりジャンク相場が手頃なこのDTC-55ES、もっと注目されてもいいと思いますが、価格がつり上がってしまうと困るので誉めるのはこのくらいにしておきます(^^;